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◆ テロワールを表現するワインの追求◆ 最初のワインとその後の4年間*価格はすべて消費税別;容量は別途記載のあるもの以外すべて750ml。Village Cellars Wine Catalogue 2023Winter◆ ワインとの出会いフィタプレタトリンカデイラ・ダス・プラタス 2021産地:ポルトガル、アレンテージョDOC  Alc.13.3%品種:タマレス(トリンカデイラ・ダス・プラタス)100%希望小売価格 ¥7,300左から:アレクサンドラ(イベントスペース担当、アントニオの妻)、アントニオ・マサニータ(オーナー醸造家)、パトリシア(醸造家)、ダヴィデ(販売担当)―― 醸造に関しては大学で多くを経験しましたが、栽培の経験をさらに積みたい単一畑シャォン・ドス・エレミタスよりCODE12734 造り手を知ることでワインをより楽しんでもらえればと始めた生産者インタビュー。今回のフィタプレタもワイン醸造の科学から土着品種まで、ワインとポルトガルとの関わり、ひいてはワインの歴史を紐解く楽しみを与えてくれます。フィタプレタの創業者でオーナー醸造家のアントニオ・マサニータ氏は、現在ポルトガルで最も注目されるワインメーカーの1人。ポルトガルに残る伝統と現代的な醸造方法をバランスよく組み合わせ、土着品種を高品質ワインに昇華していく試みを聞きました。                  〈聞き手:ディオン・レンティング(キーウィ・コピー) 2023年10月〉―― 私自身はリスボン生まれのリスボン育ちで、母は歴史の先生、父は大学で教えていました。母はアレンテージョ、現在フィタプレタのワイナリーがある場所から10Kmほどのところが生家です。父は北大西洋のほぼ中央に位置するアソーレス諸島サン・ミゲル島生まれで、光化学、特にアントシアニンの研究に長年携わっていました。 子供の頃から1年のうち数ヶ月は、いとこ達とアソーレスの島で一緒に過ごしていたので、大学では海洋学か海洋生物学を専攻しようと考えていましたが、父の友人の一人に感化され、まずはアグロノミー(作物栽培学)から始めることにしました。ブドウ栽培に興味を持ったのは、大学2,3年の時にブドウ栽培の大家で近現代のトレリス・システムに精通したロゲリオ・デ・カストロ教授に師事してからです。 まだ在学中の2001年、研修で5ヶ月間ナパのメリーヴェイル・ヴィンヤーズに行きました。それは学校で本から学ぶことと大きく違い、とても面白い経験でした。その時、オーパス・ワンの最初の12ヴィンテージの醸造にかかわったとして知られるチャールズ・トーマスと知り合いました。彼は常に実験を繰り返していて、何を聞いても実証的に答えてくれ、「ブドウの状態が良く、しっかり熟していれば、何の問題もない」が口癖でした。 彼の元で働きたいと思い翌年、再びナパに戻って働きながら「グラヴィティ・フロー 対 ポンピング」で卒業論文を書きました。その後働いた南オーストラリアのダーレンベルグでは、それまでの経験とは真逆の醸造方法にも関わらず素晴らしいワインが造られており、驚くと同時に醸造にはいろいろなやり方があることを確信しました。またボルドーのシャトー・ランシュ・バージュでも働きましたが、経験を積むうちに、いつかお金を貯めて自分のワインを造りたいという夢を持つようになりました。Hess Collection Mount Veeder 19 Block Cuveeフィタプレタアリカンテ・ブランコ 2021 産地:ポルトガル、アレンテジャーノ IGP  Alc.12.4%品種:アリカンテ・ブランコ(ボアル・デ・アリカンテ)100%希望小売価格 ¥7,300南欧で見られる品種アリカンテ・ブランコはアレンテージョで長く栽培されてきたが、この品種100%のワインはフィタプレタが唯一。粒が大きく薄味だが、フェノリックスを多く含み、亜硫酸無添加の自然発酵に向く。ブドウの個性というより、そのブドウが育つ土地をより忠実に表現する品種で、白い花、オレンジや桃のアロマ、しっかりとした厚みとテクスチャーがある。と思っていました。そのような時、イギリス人の栽培コンサルタント デヴィッド・ブース氏と出会い、彼について日々数ヶ所のクライアントを回るようになりました。多くを学ぶ素晴らしいチャンスでしたが、同時に自分にはコンサルタント業は合っていないと分かりました。そこで、デヴィッドが選んだ畑から収穫したブドウを私が醸造するという共同プロジェクトを彼に持ち掛けました。17歳年上のデヴィッドは初めは躊躇していましたが、徐々に一緒にワインを造ることに同意、2004年、共同で造ったワイン「プレタ」をリリースしました。 グラヴィティ・フローのワイナリーを借り、デヴィッドが選んだアレンテージョ地方中央部セラ・ドッサ山麓の畑で細心の注意を払って育てられた果実を細部までこだわりながら醸造。プレタの初ヴィンテージは、インターナショナル・ワイン・チャレンジのベスト・アレンテージョワイン賞を獲得しました。出だしはよかったのですが、その後の4年間はひたすら仕込みに専念すると同時に、経営危機の回避に追われました。―― 土着品種や歴史的な醸造方法についてより深く研究する余裕ができたのは2010年頃からです。父の故郷アソーレスでは、地元の土着品種の保護団体が当時89株しか残っていなかったテランテス・ド・ピコ(Terrantez do Pico)という品種を4年間で2,500株まで増やすことに成功、2010年、私はこの品種で最初のワインを造りました。このプロジェクトは、私にアレンテージョの土着品種ワインを造るきっかけをくれると同時に、そのための手段、つまり遺伝子や品種の起源、土着品種の使われ方やブレンド方法を研究する必要性、さらには自分が「コレクティヴ・メモリー(集合的記憶;コミュニティの人々の中に共通して存在し、受け継がれる記憶や知識)」と捉える「伝統」とのバランスの必要性を教えてくれました。 アンフォラを使って仕込む白ワイン「ブランコ・デ・ターリャ」は、カルフォルニアのワイナリーでコンクリート・エッグを見て、思いつきました。アレンテージョではすでに行われていたことだと閃いたのです。ここでは1906年から1970年代まで、地元の粘土を蜜蝋や松ヤニといった昔ながらの材料でコーティングしたアンフォラをワイン醸造に使っていました。この手法を再現し、アレンテージョらしさを表現に加えました。これもテロワールの一部と思っています。 テロワールを表現するため自然発酵にもこだわっていて、白ワインは満足できるものになるまで3-4年かかりました。今ではテロワールを忠実に表現するワインが単一畑シャォン・ドス・エレミタスよりトリンカデイラ・ダス・プラタスは、白品種モウリスコと赤品種アルフロシェイロの交配による白ブドウで、古くからアレンテージョにある土着品種。風味がシンプルで、大半はブレンドに使われるが、自然発酵し、フレンチオーク旧樽で澱とともに12ヶ月間熟成させることで、豊かな酸と 果実がバランス、しっかり骨格のある上品な味に仕上がる。CODE12642アレンテージョの伝統と科学のバランスを取りながら「テロワール」として表現その土地が持つ時代的独自性を反映した新たな価値を生み出したい――― アントニオ・マサニータ (オーナー醸造家) 生産者に聞く: フィタプレタ(ポルトガル、アレンテージョ地方)-6-

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