◆ ラス・ヴィーノの始まりCODE12924 ニックの祖父母、医師のケヴィンとダイアナ・カレン夫妻はマーガレット・リヴァーを高級ワイン産地として確立した「3人の医師」*の一人で、1971年北部のウィリヤブラップに所有していた農場にブドウ樹を植え、ダイアナは西オーストラリアで最初の女性醸造家となりました。ケヴィンとダイアナの娘、シェリー・カレンと結婚した医師のマイケル・ペターキン、ニックの父は1979年に自身のワイナリー、ピエロを設立しました。”ワインにどっぷり浸かって育った”ニックが醸造家になるのは当然とも見えますが、彼の物語にはさまざまな紆余曲折があります。彼が生み出した手づくりワインともいえるラス・ヴィーノは、「あえて違うことをする精神」が生んだ個性的なワインで、今後のワイン業界の新しいあり方を示す一つとも言えます。ヴィレッジ・セラーズが創業して36年、これまで日本に紹介してきた生産者の多くがその地を代表する存在になっています。そして今、どのように次の世代へ移行していくのかが、新しい課題になっています。プレミアムワイン産地マーガレット・リヴァーを開拓したパイオニア直系の孫であり、現在オーストラリアで最も注目される若手醸造家の一人、二ック・ペターキン氏に彼の選択を聞きました。 〈聞き手:ディオン・レンティング(キーウィ・コピー) 2024年7月〉ニック ―― ワイン一家に生まれたので、子供のころから畑やワイナリーだけでなく、セラードアでも手伝っていました。家でも食事の時、また来客の時は、いつもワインの話で、生活のあらゆる面がワインに関連していました。外からみるとワイン醸造家はロマンティックに見えるかもしれませんが、四六時中その中にいると、きつい仕事で、おまけに一生懸命働いても、すぐに報われるわけではないです。父はブドウを栽培してワインを造りながらも、本業は医師でした。 自分は大きくなるにつれて、畑の雑草取りからタンクの掃除まで全てやりましたが、畑での栽培もワイナリーでの醸造も自分の将来と言うより単なる仕事、勉強や旅行など自分の好きなことをするための資金稼ぎとしか思っていませんでした。高校卒業後はピエロ、続いてポルトガルのエルダーデ・ド・エスポランでヴィンテージを経験し、その後パースの西オーストラリア大学に戻り、生化学と微生物学、併せて財務とマーケティングを学び、時には中断して旅に出て、各地で収穫を手伝っていました。その中には、メキシコのカーサ・マデロ(アメリカ大陸最古のワイナリーで、オーストラリアでのペンフォールズに匹敵する名門)や、トルシャードというソノマやナパに広大な畑を持ち、自社でワインを造りながらも他のワイナリーにブドウを売ることがメインの生産者もありました。そこで働いていた時、ブドウを「大量生産の商品」として売るのではなく、「職人の手仕事」の精神で扱ったら何ができるだろうかと考え始めました。 自分の道が繋がる先を考え出してからは、さらに各地でワイナリーの仕事を経験し、やがてアデレード大学の栽培・醸造学の修士課程に入りました。当初からとても産地:西オーストラリア州マーガレット・リヴァー品種:シュナン・ブラン Alc.13.9%います。北西部ヤリンガップのユニークな畑は、砂利質のローム層土壌でバイオダイナミックとオーガニックの認証を受け、トレリスや剪定もされていません。豊作の年はよいのですが、不作の年はあまり収穫できません。収穫も選別も手作業です。全房のまま軽くプレスし、古いフレンチオークとアンフォラで自然発酵させ、MFLはしません。2週間に1度澱を攪拌し、清澄は行わず、軽く濾過して瓶詰めします。”希望小売価格 ¥8,200from Nic“ CBDBは2013年に初めて造ったワインで、以来ずっと造って気に入り、数ヶ月も経たないうちにこれが自分の天職だと気づきました。修士課程での2年間は、一緒に勉強していた誰もがワインに焦点をあて、ワイン一色の生活でした。そこでの決定的な瞬間の一つが大学の客員ワインメーカーでゲスト講師のベルタス・フォーリーが主催した南アフリカのシュナン・ブランのテイスティングで、シュナン・ブランの表現の幅広さとクオリティの高さに驚きました。マーガレット・リヴァーにはシュナン・ブランがかなりありますが、主にブレンド用やバルクワインに使われ、素晴らしい質のワインは造られていませんでした。―― 大学を出てからは、旅をしながらワインメーカーとして働き、2013年にマーガレット・リヴァーに戻りました。当初は生活のためにピエロで働きながら、日曜日に自分のワインを造りました。ピエロには醸造家の仕事は空きがなかったので、自分のワインを造るため、父にピエロのブドウを買えないか聞きましたが、「ピエロで造るワインは全部売り切れるから、手に入るブドウは全部必要」と断られました。叔母のヴァーニャ・カレン(カレン・ワインズのオーナー兼ワインメーカー)も同じでした。そこで、あえて違うことをしようとする考えを共有する生産者の協力を得て、クラフトワインの小さな会社を設立しました。「ワイン(vino)造りは運(luck)と技(art)と科学(science)」という意味を込めてL.A.S.Vino(ラス・ヴィーノ)という名前にしました。 他の人と同じワインを造る意味はないと思っていました。あえて単純化すれば、多くの造り手は、品種もワインスタイルも瓶の形もラベルもストーリーも同じものを造って、それで違う結果を期待し、市場で熾烈な競争を繰り返しているわけです。ラス・ヴィーノは初めから品種も造り方も、その結果パッケージも、明確で個性的、そんなマイナーな分野でも最高の、他とは違う最高のワインを造ろうとしました。 祖父母や両親がワイン造りを始めたとき、彼らはパイオニアで、ブドウの品種から栽培密度まで、何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを試しながら、傑出したワインを造っていきました。フランクランド・リヴァーが新しい産地として始まった頃に訪れましたが、そのときも同様のパイオニア精神を感じました。私は品種の選択、ワイン醸造、そして外観も、他の人々がしていないことに取り組み、ワインへの愛着を表現したかったのです。 実際には、可能な限り有機農法で栽培し、土壌や品種、あるいはその両方の組み合わせがユニークな畑を見つけ、そこから他CODE12938シャルドネの美しさを表現、三方を海に囲まれた畑から生まれる力強さとフレッシュさを併せ持っています。果実は全て手摘みで、全房プレスされ、アンフォラと古いオーク樽を併せて発酵・熟成されます。部分的にマロラクティック発酵を行い、熟成は10ヶ月間です。”産地:西オーストラリア州マーガレット・リヴァー品種:シャルドネ Alc.13.7%希望小売価格 ¥7,000from Nic“ このワインはマーガレット・リヴァーの*価格はすべて消費税別;容量は別途記載のあるもの以外すべて750ml。Village Cellars Wine Catalogue 2024Autumn◆ 個性的なラス・ヴィーノに辿り着くまでピエロ&ファイヤー・ガリー ゼネラルマネージャー) ラス・ヴィーノ シュナン・ブラン・ダイナミック・ブレンド 2023ラス・ヴィーノ シャルドネ 2023 ファーガソン・ヴァレーのグルナッシュ畑で-6-あえて「違うこと」にこだわる―― ワイン一家に生まれた次世代醸造家の選択ニック・ペターキン(ラス・ヴィーノ オーナー兼醸造家、 生産者に聞く:ニック・ペターキン (西オーストラリア州マーガレット・リヴァー)NEW
元のページ ../index.html#6