2017_summer_oroshi_J
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-7-置づけている。25年経つと当然ブドウの個性も変わるし、畑とその変化をいかに表現するかについての我々の知識も深まっていく。自分はこれを「心地よい成長」と呼んでいる。植えつけ当初はブドウにとっても新しく厳しい環境で、氷河によって形成された川、乾燥した気候、真夏の長い日照時間、収穫時期の寒い夜などに強制的に晒される。年月が経つと、ブドウは環境にすっかり溶け込み、また我々自身もブドウ樹と対話できるようになる。一般的に、ニュージーランドの果実は強い品種特性と冷涼な夜間のインパクトによって風味が凝縮し、時には強すぎるとも言われる。しかし、樹齢が高くなると果実味は落ち着き、丁寧に育てればその土地らしさ、ミネラリティを表現するようになる。それは果実を通じてワインに現れ、より緻密、複雑さ、フィネスが備わる。フェルトン・ロードだけではなく、15-25年前に植えられたオタゴの他の畑でも、樹齢が高まるにつれ、ワインには複雑さが現れている。◆ ワイナリーでの20年  ワイナリーの設計に際してはブドウの質と個性をワインに取り込むため、果実をできる け優しく扱い、醸 における出来る限りの介入を避け、自分が世界の銘醸地で経験した最良の方法を取り入れ、その土地と樹齢からもたらされる複雑さを表現するように努めた。各地で様々なことを学んだが、ブルゴーニュでは多くの蔵元で何世代にも亘って家族が従来通りのやり方を継承していた。ワイナリーで余計な手間をかけることのない、シンプルかつ伝統的なやり方は尊敬に値する。ニューワールドでは何もないところから始まっているため、フェルトン・ロードが経験するのと同じ課題に一つ一つ取り組んでいた。特にオレゴンは多くのワイナリーが、我々同様、年間生産量10,000-15,000ダースの規模 ったので、最も多くの影響を受けた。ワイナリーでは、これまで大きな変更はしていない。この13年間、すべて自生酵母で自然発酵させている。セラー内に棲みついている健康的な酵母とフェルトン・ロード特有の果汁が個性を生み出す。ピノ・ノワールは3割を新樽で熟成している。オーク樽は21年間、ブルゴーニュのダミー社製のものを使用している。同じメーカーの樽を使うことは、フェルトン・ロードのスタイルを一貫して維持するためにも大事なことである。樽の焦がし度は、ソフトで繊細なミディア トースト。昨年11月にブルゴーニュでダミー社の人たちと一緒に食事をしたが、彼らは長年の付き合いから我々がオーク樽に何を望んでいるかをよく理解している。フェルトン・ロードのよいシャルドネにとって、樽は敵。果実に閉じ込められた、畑がもたらすミネラル感と塩っぽさを引き出すため、 フェルトン・ロードではシャルドネに旧樽しか使わない。その結果、樹が若い時は芳醇な果実が表現され、樹齢が高まるにつれスパイスやいくつものアロマの広がりが出てくる。現在、フェルトン・ロードではピノ・ノワールが7割、シャルドネが2割、ドライとオフドライ・リースリングが1割を占める。◆ セントラル・オタゴにおける気候変動  地球温暖化の課題の一つは急激な気候変動 が、それはセントラル・オタゴでは昔から起きていることなので、我々にとっては変化というほどではない。 最低気温は年々上昇し、それは畑の植物の成長サイクルに影響している。 冬は以前ほど寒くなく、オタゴの水力発電用ダ が凍ることもこの数十年ない。昔は冬にはアイススケートやカーリングが盛んだったけれど、その機会も少なくなった。芽吹きの時期が早まり、収穫も過去に比べて2ー3週間早まった分、ヴィンテージが天候不 の影響を受けることは少なくなった。とはいえ、今年(2017年)は非常に寒く、春の開花と結実の不良に夏の天候不良が重なり、収量は3割落ち込み、2007年以来の不作となった。さらに高まる評価今年3月、世界のトップクラスの酒類業界関係者(マスター・オブ・ワイン、ソ リエ、買い付け業者、ワインエデュケーター、ジャーナリスト)200人以上が投票する”Drinks International”誌主催の「賞賛すべきワインブランド(The WorldʼsMost Admired Wine Brand)2017」で、フェルトン・ロードは13位にランキングされた。ナイジェルとブレアは、極めて小さなブランドでま 歴史も浅いワイナリーに対するこの評価に戸惑いながらも、謙虚に受け止めている。ヴィレッジ・セラーズがフェルトン・ロードのワインを取り扱いたいと最初にワイナリーを訪ねたのは1999年9月。ま 10代前半の娘二人を連れ、ニュージーランドへスキーに行った時 った。子供たちをスキー場に残し、車で1時間ほどのフェルトン・ロードを訪ねると、若いブレアが畑と一部完成していたワイナリーを案内してくれた。彼は、フェルトン・ロードは売りに出されていて、誰にワインを輸出するかはオーナー次第と語った。急いでスキー場に戻る途中、スピード違反でつかまり悪い予感がしたものの、ヴィレッジ・セラーズを選んでくれたナイジェルとブレアには深く感謝している。〈リチャード・B・コーエン、中村芳子(ヴィレッジ・セラーズ 創業者・オーナー)〉① The Elms VineyardBlock1Block2Block3Block5 ② Cornish Point Vineyard③ Calvert Vineyard④MacMuir Vineyard④ マクミュアー・ヴィンヤード  MacMuir Vineyard③ カルヴァート・ヴィンヤード  Calvert Vineyard エル ズ・ヴィンヤード  The Elms Vineyard② コーニッシュ・ポイント・ヴィンヤード  Cornish Point Vineyardセントラル・オタゴ、バノックバーン地区とフェルトン・ロードの畑  エル ズ・ヴィンヤード② コーニッシュ・ポイント・ヴィンヤード③ カルヴァート・ヴィンヤード

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